心残り

ヤレるだけヤッてみたけど、やっぱミーコには無理があるかな…。
ここ数日、ミーコを迎えるためにと世田谷基地の準備を進めてきたが老猫にはキツいと思う。
以前に引越しした時は、1年ほどノイローゼ気味で僕の足が傷だらけになるほどしがみついて離れなかった。
特殊な環境で育ったミーコは難しい。


もっとヨボヨボならば…ジッとしているだけやろうから僕も安気なんだけどさ。
ミーコの場合、歳はくっているけど飼い主に似て元気だから…。
けれども実年齢で考えると、いつガクンときてもおかしく無い歳なので怖いの。
これほど環境を変えてしまうと、その可能性はかなり高いと思う。



惚れた女の忘れ形見。
これが片田舎へ関わってしまった最後の責任なので正しい選択をしたい。
長年かけて半生を清算してきたのに…
ここで下手を打つと人生に後半へ引きずるハメになる。
片田舎絡みで人生に負い目引け目を持ち越すのはイヤなんだ。


あの女には苦労させてしまったけれども、それに報いるホドの罰は自分に課した。
死んだほうが楽だと思うほどの自己制裁なのでヤツに借りは無いが…
そのトバッチリがコヤツに降りかかるのかと思うと後味が悪い。
あの女が去り、僕が片田舎へ1人ポツンと残されたのは12年前も前のこと。
それから語り尽くせぬほど苦労の連続だったが何度も何度もコヤツに救われた。
コヤツが居なかったら富を得るどころか借金まみれでケツを割っていたかもしれない。
仕事をヤメて以来ここ数年も、僕は水を得た魚のようにアチコチを駆け回っていたけど…
今度はコヤツが1人ボッチでお留守番。


僕が出かけようとするとガラス越しで恨めしそうに睨みつけてのお見送り。
僕が戻ると大声で擦り寄り1時間以上はしがみついて離れない。
まるで犬のよう。さすが片田舎育ち。
機械に餌を与えられながら主の帰りを待つだけの暮らし。
機械人間かのような飯の種男へ寄生して食いつなぐ片田舎女ならばそれでも幸せだろうが…
ミーコはそろそろ限界。
かと言って、また引越しも…ねぇ。
猫は9回生きるそうだが、やっぱ気の毒やわ。


こうなったら、片田舎基地へ誰かに住んでもらって世話してもらうか?
それでは本末転倒やん。 ホント、困った。
赤穂浪士好きなあの女の怨念か復讐じゃないか?と思えてくるほど重くのしかかる。
けれども、だからこそ…
僕は片田舎者のような守銭奴機械人間にならずに済んだとも言えるのよね。